
京都大学大学院生命科学研究科博士課程1年の嶋貫です。学部時代は別の大学で免疫の研究を行い、研究者として大きく成長するために京都大学に進学しました。将来は、アカデミアの研究者として、「面白い!」と感じる研究を遂行していくと共に、社会にどんどん研究成果を還元していけるような”二刀流”を目指しています。
大学院から京都大学に進学することを決めた理由について
私が元々通っていた地方の国立大学では、博士課程に進む方や研究に対する高い熱意がある方が少ないと感じていました。
研究者として大学などの公的研究機関で働きたいということを、当時の学部の先生方に相談すると、「志の高い学生やメンターがたくさんいる研究環境で、自己研鑽しながら研究をしたほうが良い」とアドバイスをいただき、外部大学院(京都大学)に進学することに決めました。
民間企業の研究職ではなく、アカデミアの研究者を志望理由
一番の理由は、「知的好奇心に駆られた研究をしたい」という点です。例えば、がんの治療薬を作りたいのであれば、製薬企業でも良いと思います。しかし、企業は経営し続けるため、社員を支えていくために利益を出す必要があります。そのため企業全体として創りたいがん治療薬を目標として掲げて、企業の研究者はその目標達成のために具体的な戦略に沿って一丸となって研究します。こうした社会の要求に応える研究は不可欠ですが、個人的には既定路線よりも「面白い!」と感じる独自の研究を展開していきたいという思いがあり、アカデミアの研究者を目指しています。
研究成果の社会実装の重要性や実現方法に関して
推進してきた自身の研究成果を社会に還元できた時、研究者は社会との繋がりを実感し、さらなる研究への活力が湧き出ると考えています。また、特にアカデミアの研究者が使う研究費はそのほとんどが公的資金であるため、社会から研究に対する信頼と理解を得る上でも、社会実装は重要だといえます。
社会実装とは社会の顕在的ニーズ(今要求しているニーズ)に応えるものですが、アカデミアは社会との繋がりが希薄です。そのため、研究者は社会とのつながりを意識的に保ち、顕在的ニーズに応えるためのアンテナを常に張ることで、社会実装のヒントが得られます。一方で、研究者が社会実装だけを追求することには懸念もあります。なぜなら、潜在的ニーズ(将来の、もしくはまだ社会が認識できていないニーズ)を掘り下げる視点も、社会にとって重要だからです。たとえば、世界中の多くの命を救ったコロナウイルスワクチンの開発は、コロナ禍を予見していたからではなく、「RNAと免疫の関係性が知りたい」という知的好奇心に基づく基礎研究から生まれました。つまり、社会実装を軸にした研究はもちろん重要ですが、それと同等に、知的好奇心に駆動された研究は思いもよらない社会貢献を生み出すことも忘れてはいけません。むしろ、社会に爆発的な影響を及ぼす研究は基礎的なものが多いと言えるかもしれません。

生命科学研究科の志望動機について
特に小さい頃は体が弱く、医療従事者の方にお世話になることがあったので、その頃から医療ってかっこいいなという思いを持ち続けています。
また、学部の生物に関する講義で感じた生命の神秘、そして学部2年からの生物学研究の面白さに魅了されて、今後もこの領域で研究をしたいという思いが生まれました。
そんな時に見つけたのが、京都大学大学院生命科学研究科でした。本研究科は、複雑な生命現象の全容解明のために必要だと従来から叫ばれていた異分野融合を「医学、農学、薬学、工学の垣根を越えて生命やその周辺環境を多角的に理解し、独創的研究を展開する」という形で実現した日本初の研究科です。生命科学の研究を学ぶのであれば、本研究科しかないと思い進学を決めました。
将来の夢について
将来の夢は知的好奇心に基づく興味深い生命現象を明らかにしていく、生命科学のアカデミアの研究者になることです。
加えて医療従事者のように誰かの役に立ちたいという想いもあるので、基礎研究に従事しつつ、アカデミアで生まれたシーズ(技術や知見)を社会実装につなげられるような活動に関わりたいと考えています。実際、そうした取り組みの機会を日頃から探しています。
ー研究の種や世の中のニーズを見つけるために意識していることを教えてください。
生命科学領域で社会が求めているものはなにか、起業家や研究者として社会実装する上で求められる事は何かを学び続けることを意識しています。そのために、現在、Nucleate Japanという団体(Nucleateというボストン発のバイオベンチャー領域を盛り上げていく団体の日本支部)で、運営メンバーとして活動しています。主にバイオベンチャーに関するイベント運営をする中で、国内外で活躍されているバイオベンチャー領域の最新情報をキャッチアップしたり、トップランナーのお話を伺う機会を得ています。
ーNucleate Japanでの活動を通してご自身の糧になったことはございますか?
日本のバイオベンチャー領域の今を知り、今後必要なことを学べた点です。特に、アメリカなど大学発ベンチャーが多く生まれる国と比べて、日本では研究者の社会実装に対して無知であると非常に感じています。実は純粋な研究と社会実装を目指す研究では、求められるデータが異なります。そのため、社会実装の知見に乏しい研究者は、データのとり直しなどによって皆さんに届けるまでの時間がかかってしまったり、社会に還元した後も多くな改善を余儀なくされることがよくあります。この例に代表されるように、研究者の社会還元への理解度は、社会還元の量や質に大きく影響を与えます。少しでも多くの日本の研究者が社会実装への意識と知見を持つことで、研究成果の社会還元を促進し、よりよい社会を実現できると考えています。
研究成果の社会実装において、研究者と企業の関係性について
研究者と企業は、「パートナーであるべき」と思っています。大学発ベンチャーに関わってきた方々にお話を伺うと、研究者が起業家として、もしくは経営陣として企業の運営に携わると、経営知識不足によって会社を潰してしまう事例は意外と存在します。餅は餅屋じゃないですが、それぞれの強みを活かし、研究者側は研究に注力し、企業側は経営に集中し、双方が良いパートナーという形で寄り添っていければ、一つでも多くの研究成果を一人でも多くの人に届けることができるため、将来の日本の社会はより良いものになっていくと期待しています。
大切にしている価値観について
「面白いと思ったら、まずはやってみる」ということです。一流のアカデミアの研究者になろうと頑張ってることもそうです。また社会実装の視点が欲しいと思いNucleate Japanの運営をしてみたり、多角的な視点で社会を見てみたいという想いからエニーに所属することも、私の好奇心をを大切にしてきた結果だと思います。、自身の好奇心を大切にするようになってから成長を実感できているので、これからも心に留めておきたい価値観です。
背景を薄い青にした理由について
私は研究が好きなので、個人的な研究のイメージカラーである青色、その中でも淡い色が好きなので淡い青色を選びました。
エニーについて
ーエニーに実際に入ってみて、どのように感じていますか。
たった5ヵ月しか所属していませんが、「多角的な視点で社会を見てみたい」という想いは実現できています。エニー生主催のイベントや第一三共さんとのプロジェクトへの参加を通じて、独自の信念を持っている方、好きなことに夢中な方、予想外の意見を提案してくれる方など、様々な人との出会いがあります。こうした豊かなものの見方を体験することで、多角的な視点に基づいた柔軟かつ論理的な思考、そして異なる背景を持つ人への理解につながり、一人の人として成長しているとと感じています。
ー第一三共とのプロジェクトに関して教えてください。
新たな社会貢献事業を第一三共に提案をするというプロジェクトです。私達は学生なので、社内で何か企画を立て、プレゼンをして、実際に社会を動かすという経験をしたことがありません。そうした中でプロジェクトメンバー全員で情報をかき集め、どのように論理的に企画を組み立てていくかを考えている段階です。
定期的に第一三共とミーティングを行ったりしながら、「これが第一三共が求められている社会貢献事業だ」と熱意をもってお伝えできるようにチーム全員で協力して活動しています。
ーメンターワークアウトはいかがでしたか?
今自分は何を考えていているから次はこうすべきだ、と自身について理解していると思っていました。しかし、意外と自分の知らない一面があるんだなと痛感しました。メンターワークアウトを通し、潜在的な自分を知ることができたため、これからの活動では自分のいいところと活かしつつ、悪いところを補いなっていけると思います。自分で考えても答えが出そうにないときは、またメンターワークアウトを利用して、自分を見つめなおしてみようと思います。
ーエニーで今後行いたい企画はありますか?
関西でもエニーを盛り上げていきたいので、京大生や関西のエニー生で集まりたいです。他のエニー生が持つ思いを直接聞くと、私自身もワクワクするだけでなく、もっと頑張ろうという力をもらえるので、ぜひ開催したいです。