※はじめに|本記事は、エニー生によるディスカッションを、個人情報を秘匿した上でレポーティングしたものです。転載・転用・引用などは禁じられています。
要約
このディスカッションイベントでは、企業が行う社会貢献活動に対する学生視点での課題感や違和感についてエニー生が議論しました。参加者からは、社会貢献活動が本質的でないように感じられること、活動内容や効果が不透明であること、消費者にとってメリットが分かりにくいことなどが指摘されました。また、企業が社会貢献活動を行う理由についても議論し、現状の施策を見る限り、企業にとってのリターンが重要な要素であるという意見が多く出ました。
社会貢献活動に対する課題感や違和感
参加者から、企業の社会貢献活動に対する様々な課題感や違和感が指摘されました。具体的には、社会貢献活動が本質的でないように感じられること、活動内容や効果が不透明であること、消費者にとってメリットが分かりにくいことなどが挙げられました。また、活動内容が表面的であったり、わかりやすい数値目標だけを重視するケースに疑問視する声もありました。
企業が社会貢献活動を行う理由
企業が社会貢献活動を行う理由について議論が行われました。既存の取組から推察する中で、参加者からは、企業にとってのリターンが重要な要素であると考えられるという意見が出されました。具体的には、企業の名声向上や消費者の購買意欲の促進、サプライチェーンの要求への対応、行政対応、補助金の獲得などが挙げられました。また、地域社会との良好な関係構築の観点から、企業が立地する自治体への貢献が有効であるという意見もありました。
導入
(ファシリテーター)社会貢献事業とは何か、社会貢献事業に感じる違和感・課題感を議論していきましょう。
PROJECT anyがエニー生を対象に集計したアンケートで、「日本企業のサステナビリティについてどう思いますか?」という質問項目に対して「本質的だと感じる」もしくは「どちらかというと本質的だと感じる」と回答した割合は、わずか16%にとどまっています。一方で、「全く本質的ではないと感じる」もしくは「どちらかというと本質的ではないと感じる」と回答した割合は、全体の約34%に及んでいます。
今日ディスカッションに参加しているエニー生の中でも、企業の施策を本質的ではないと感じている人もいると思います。本日は、企業が実施する社会貢献事業に対して感じる違和感や「こうだったらよいのに!」について、身近なところからディスカッションしていきましょう。
違和感を感じる、身近なSDGsへの取組み
(A)ビニール袋の無料配布を廃止したけど、結局ゴミ袋が欲しいからお金出してでもビニール袋を買っていて、どれくらい意味があるのかわからない。実質的には何か良くなっているのか。表面上で数値が良くなり、ある一面ではよく見えているけど、実際それが何にどれくらい効いているのかと考えると、疑問視してしまう。もちろん、そういった数値をステークホルダーによって頑張っているのだと評価されるというのはわかるけれど、果たして本質的なのかな?と感じる。
(B) 私もマイバッグを購入しましたが、結局ゴミ捨て用のゴミ袋がないから毎回5円払ってレジ袋を購入しています。
(C)私は、大企業の人がSDGsバッジをつけているのが、やってる感だけ出ていて実際は何も意識が高くないのでは?と思うことがあります。それが一種のステータスになっていて、それがゴールになっている気がする。
(D)コーヒー屋さんのストローが紙になって環境に良いのはわかるけれど、あれを使用することによって何がどれぐらい環境に良いのかまではわからないので気になっています。
(B)私はフェアトレードに関心があるのですが、スーパーの商品にフェアトレード認証を取ったものがあったとして、そのフェアトレード商品を買うか買わないかの決断をする際に、購入商品の何%が本当に生産者に行くのかが不透明だなと思います。自分の購買活動によってどれだけ生産者に貢献しているのかを明確に知りたい。生産者にフェアな条件でやってるよ、というのであれば、それを明示すべきだと思います。信じきれないというか、ただただ価格が上がっているだけのような気がしてしまう。情報が開示されて、商品からその情報までのアクセスが簡単にできれば嬉しい。
(C)募金とかもそういう印象になっちゃっている。募金した100円のどれくらいが本当に届けたい人たちに届けられているのか、24時間テレビの募金活動の不祥事に近いことは多そう。
(E)企業サイトを見ていると、「SDGsやってます!」と言ってオフィスに緑があるだけみたいなこともよくあるじゃないですか。「だから何だよ」って少し思ってしまいますし、確かに小さなことを積み重ねることは大切だけど、表面上でできちゃうことだから、それをサイトに掲載して私たちはSDGsに貢献しています、と言われても逆に浅いなと思ってしまいます。
(A)確かに何かにつけてSDGsマークをつけているけど、大したことをしていない企業サイトはよく見ますね。「そうなんだ」としか思わないです。むしろそれ以外は何もやってないのかな、と思います。
(D)私は企業単独で動くよりも、行政の計画に協力することが最も実効性があると思います。地域の環境を守っていくグランドデザインの中で、そのために植樹をする、という計画があると思うので、そこに協力することは効果的だと思います。
逆に、企業単独で自分がいいと思ったからここに植えてきましたってなると、足並みがそろわないし、地球全体として本当に効果があるかとか、効率的なのかとか感じたりもします。
教育に関する取組みと戦略性
(C)企業サイトを見て感じるのは、例えばキャリア支援事業として小学校とかに出張授業を行う企業は多くてそれ自体は良いことだと思いますが、なぜその学校が選ばれているのかが見えてこない。本当にキャリア支援を行いたいのであれば、特定の学校の特定の学生に教えるという施策自体があまり戦略的ではないように映ります。
(A)社会貢献事業は、どこも良いことをやっているけれど、それがどれくらい効果があるのか、みたいなところはやっぱり気になります。さっきの学校の話で言うと、会社の偉い人と知り合いの教育従事者がいて、そこでちょっとやってみましょうかってなっただけなのかな?と想像してしまったりします。
それってどれくらい効果があることなのか
(ファシリテーター)ここまで聞いていると、「それって結局何の効果がどれくらいあるの?」、やっていることはもちろん良いことなのだけど、結局何に繋がっているのかがわからない、という意見が多かったですね。
寄付だけじゃダメなの?
(D)そう考えると、さきほどの行政などが主導するグランドデザインの話ではないけど、NPO法人に寄付することが最も効率的なのかと思います。例えばエンジニア養成機関のNPOなどに何億円と寄付するとしたら、将来世代へのインパクトは非常に大きいのでは、と思います。
(A)たしかに。実際には自社で何かを提供している会社も多いので、そう考えると、企業としては自社で直接かかわってPRしたいという意図がある気がします。お金を寄付するだけではなく、主体的にアクションしているところを見せていきたいのかな。
(B)だとしたら、折衷案として、寄付しつつも協力して何かやるのがよさそう。
(C)選定が難しいのかもしれないですね。選定が独断的過ぎると炎上リスクをはらむので。株主への説明責任とか。私が今インターンしている会社で、ちょうど上場審査対策の質問項目を確認したところ、資本関係がある会社は、反社ではないか、取締役との個人的な関係がないかなど細かく確認しているので、寄付先の会社選定をする場合はオペレーションコストが大きくかかるのではないかなと思います。
社会貢献を自分事化するための戦略
(ファシリテーター)企業が行う社会貢献事業はないよりはあった方がいいことは共通のようですね。ただそれがどういう影響があるのかは見えてこない。そこが見えたらもっといいですね。例えば、CO2輩出何万リットルが削減されましたと言われても、イメージがつきづらかったりします。
(D)やっていることの可視化でいうと、某飲食店は社会貢献事業に積極的に取り組んでいる印象があります。それをなんでなのかなと考えると、多くの店舗が存在して、顧客との接点数が圧倒的に多いから、認知される機会が多くなる。toB企業は認知の面では、少し不利かもしれないですね。
(A)やっていることを認知する際には、自分事化できる数字があれば嬉しい。例えば1年間毎週カフェでコーヒーを飲むときにプラスチック製ではなく紙製のストローを使用することで、巡り巡って自分がゲリラ豪雨にあう確率が〇%下がる、感染症のリスクが0.00何%削減されましたよって書いてくれると自分事になるし少し楽しく社会貢献できそう。
(B)確かに、ゲーム性とか、いかに自分事として実感できるかという見せ方はすごい大事だと思う。
ESGはEばかり
(D)ESGの施策はEが多すぎる気がする。Sで見るのは、それこそキャリア事業やりました、ぐらいの印象。Sになると、施策がすごく弱くなる印象。
(E)社員への施策は、ESGとかの前に当たり前のことで、それを記載する必要性はあまり感じない。
(C)ここは以前、リサーチを行ったことがあります。企業が実施するSDGs施策をリストアップしたことがあるのですが、Eに関する施策は、どれだけ資本投入をして、その回収年数がどうかとか、電力消費をどれくらい減らせるかとか、数値化しやすい特性があるみたいです。でもSは数字が出しづらく、可視化がすごく難しいし、施策を捉えるものがすごく曖昧で、難しい印象です。
例えば高齢者支援として、こんな活動しましたとか、教育支援をしましたとかわかるのですが、企業としてこれって本当にやって効果があるのかっていうのが企業側もよくわかっていないのだと思います。Sの活動は投資対効果が見えづらいですよね。
(D)例えばジェンダーとか、そういうことをやっても、女性管理職が多いから社内が整備されているのかと考えると別にそういうイメージもあまりないし。
(A)ただ日本の20代の死因の1位は「自殺」で、これは先進国の中で日本だけ。Sには環境問題同様、深刻な社会課題として捉えるべき課題が多くあるから社会課題解決を掲げるのであれば、真っ先にアプローチが必要だと思う。日本は3分の2が森林だから、植樹活動の重要性とか課題感はそこまで自分事にならないと思うけど、こっちの問題の方が日本人はイメージしやすい気がする。
(B)世界的な高齢化も相まって、イギリスには孤独担当大臣が新設された過去もあり、Sの社会課題も年々大きくなっているはずなのに不思議。
(C)これをやったから、例えば自殺が減りましたとは言えない。さっきの孤独の問題で言うと、例えば高齢者向けのサードプレイスを作りました、年間利用者が何名で核家族世帯の利用者がこれだけ来場しましたとかあったらわかりやすそうではあるが、貢献を直接的に示す数値を算出することはできない。
(E)その施設を利用して笑顔になっている人の写真をサイトに公開して活動の様子を地道に披露することくらいしかできないような気がする。
なぜ企業は社会貢献事業を行うのか
(ファシリテーター)もう一つ考えたいテーマが、なぜ企業は社会貢献事業をやるのか、ということ。もちろんサプライチェーンの中で何かこういうのをちゃんとやってないと、発注が受けられなくなってしまうみたいな、Appleの事例は有名ですよね。
(B)企業には本業がある中で、どうしてそこまでして社会貢献事業に着手するのか。社会からのニーズがあることはもちろんそうなのだろうけど、それだけで語れるのかな。経営者も結局はそこに納得感がないから、僕らから見ても違和感があるんじゃないかな。
(C)社会貢献は結局のところ、その企業に何かしらのリターンがあると思っています。プロモーションだったり、学生へのキャリア支援だったり、将来的な採用だったり。社会貢献をすることで、名声とかリターンを意識してしまっているのではと思ってしまうことはあります。
(E)プロモーションに繋がる、購買意欲促進、サプライチェーンの関係、行政の方針、補助金とか。
(B)日本は教育投資の財源が絞られているので、そこをSの文脈で、例えば研究者の卵に奨学金を出すとかしてくれてもよい気がする。主観ですが、植樹よりも研究者に企業が持つ社会貢献費用を全振りした方が将来的には自身にも益がありそうで良いと思う。
(D)確かに。その大前提として、例えば環境を壊すような、例えば黒煙をバンバン出すくらい環境に悪い活動をしている企業はサプライチェーンがどうのこうの以前、SDGs以前に、その会社が淘汰されると思う。そういう枠組みはそもそもなくても、淘汰されそう。
(C)ただ、こういう枠組みがあったからこそ一般社会にそういう意識を持つ人が増えるという可能性はあると思います。
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